なにかのまねごと

A Journey Through Imitation and Expression

我が呼び声に応えよ獣

 ようやく再読が終わりました。以下、ネタばれ全開感想。


 9月に書いた記事 http://d.hatena.ne.jp/KZE/20080909/p1 ではオーフェンがアザリーに抱いていたのは恋心だと決めつけ壮大な誤読をしました。というわけで、そこら辺を注意しながら読みました。作中では何度もオーフェンはアザリーを尊敬していたと言っていますが、本当にそれだけなのでしょうか?P56から引用します。

「あんたって、いっつも投げ飛ばされるのを待ってるみたいよね」
 彼女はよくそう言った。彼は、実際そうなんだということは、あえて秘密にしていた。

 これだけでもやっぱりオーフェンはアザリーのことが好きだったんじゃないか?と思ってしまいます。けれども、それと同時にこうも言っています。P240。

「仮にあんたが恋人だったとしたら――俺はあんたの言うことに納得もしただろうな。でも違う(後略)」

 確かにアザリーはオーフェンの恋人ではありませんでしたが、でもオーフェンが本当にアザリーに恋していたなら、ここで納得するのかな?ということが読み切れません。オーフェンのアザリーを尊敬する心が、彼女が自己保身のためにチャイルドマンを殺したところで消えてしまったのは分かります。これがもし恋心だったら、盲目的に彼女の行為を認めてしまうものでしょうか?これで冷める恋心というのも、やっぱりある気がするのです。
 やっぱり私はオーフェンがアザリーに抱いていたのは尊敬だけだったとはどうしても思えません。恋心ではないにしても、尊敬以上の何かがあったことは確かだと思います。いくら周りが見えてなくても、尊敬だけで自分の全てを捨ててアザリーを捜す旅に出ることはないと思ってしまうのです。
 そして私はやっぱり、オーフェンはアザリーに失望したとしても、自分がアザリーに抱いていた尊敬以上恋心未満の何かが本物だと信じることができたから旅立つことができたんだ、と思います。チャイルドマンと自分を比べ自分の幼さを認め、その上でアザリーと向き合ったから彼女のチャイルドマンに対する気持ちの告白を聞いてもそれを受け止めることが出来たんだと。そんなことどこにも書かれていない、思い込み以外の何者でもありませんが。


 また、オーフェンという物語はオーフェンが主役ではありますが、それと同時にアザリーの物語でもあったと思います。第6章で吐露された彼女の心情。オーフェンからチャイルドマンの真意を聞かされたときの彼女の心境はいかばかりだったのか?そしてその後のアザリーの動向で何が彼女の償いになったのか?ならなかったのか?私はアザリーに関しては全然読めていないので、今後そこも注意しながら読んでいきたいです。
 とりあえず次は暗殺者です。暗殺者を読んだらこの感想もまた変わるのかな?


【追記】
 こんなこと書きましたが、やっぱりオーフェンは1巻の段階ではアザリーに対する気持ちに決着を付けてないのかも、とも思います。失望を感じたまま、アザリーと先生のことも胸にしまい込むことができないまま旅に出たのかもしれない。本当によく分かりません。一応最終巻まで読んでるけどまだ分かってません。
 でも、こうやって分からないことがあってそれがオーフェン世界のキャラクターの、コギーがあっさり読者が知らない男性と結婚してしまうような、そんな懐と言うか幅の広さなんじゃないかな?と思います。物語の中でキャラクターが完結してなくて、読者が知らない一面がある気がする。それが魅力的でたまりません。