原作既読。試写会の段階からの悪評を聞いてはいたが、やはりゲドファンとしては見に行かねばならないだろう、少なくともネタとして楽しもう、という心持ちで見てきた。結果、面白くはなかったが、駄作として切って捨てるほどの出来でもなかった。
まず真っ先に思うことは、監督には観客を楽しませようとする視点が欠けているということ。しかし、テーマを描くことには誠実であろうとしている姿勢は見て取れた。下手にエンターテイメント大作として作ることに挑戦するよりはこれで正解だったのではという気になってくる。
もしもこの作品が派手な魔法戦をドンパチやらかす様なものになっていたとしたら、例えそれが面白くとも私は間違いなく怒りを覚えただろう。しかしそうではない。ゲド戦記はエンターテイメントとして昇華させるにはやや難解な作品だ。自分の実力ではそれに及ばないと思って娯楽性の追及をやめていたのだとしたら、宮崎吾郎監督はなかなかバランス感覚があるのではないだろうか?実際のところどうなのかはわからないが。
それでも、終盤の展開は間延び気味だったしとにかくテーマは台詞で説明されるし印象に残った映像は鷹に変身したゲドがクモに挨拶にいくシーン位だし、やっぱり面白いといえるものではなかったと思う。船に乗るシーンがほとんど出てこなくて群島からなるアーキペラゴの世界観がわからなかったのも不満のひとつ。ここら辺がもう少しどうにかなっていたら、個人的には「いい作品です」と言える出来になってたかも。
しかしやっぱり、宮崎駿のジブリエンターテイメントを期待して観に行った人にとっては、とてつもない地雷だったんだろうなぁ、この作品。