なにかのまねごと

A Journey Through Imitation and Expression

バイナリ畑でつかまえて 電子書籍版感想

 買ったのはずいぶん前だけれど、最近書籍版が出たらしいので、改めて読んで感想を少し。

 

 このマンガは短編集だ。だいたいが2ページもので、短編集というよりショートショート集といった方がいいかもしれない。ジャンルはSFで、私たちの身近にあるネット、スマホSNSなどといった諸々がもう少し進んだ世界が舞台になっている。

 この作品の最大の魅力は、短いページに詰まった「気づき」のエッセンスだ。どの作品も何気ない日常をくりぬいただけのようで、一見なんの意味があるかわからないこともある。けれども、そこに使われている技術を軸にしてみると、そういうことかと腑に落ちるのだ。こうした「気づき」が与えてくれる面白さは、パズルの最後の1ピースだけをどんどんはめていくような感じで好ましい。

 個人的に一番好きな話は「みんなのレシピ」だ。ネットを通してなんでも共有してしまう世界にあって、「伝わらないもの」と「伝わるもの」があることを鮮やかな対比で描き出す。その上で読後感が柔らかいのがいい。

 元々このマンガは ITmedia PC USER で連載されていたもので、初出からしてデジタルである。それが最初にKindleでまとめられて刊行され、それから書籍化という流れになっている。この、デジタルネイティブでありながらアナログの良さも受け入れる流れそのものが、実にこの本らしいと思う。

 本当に、素敵な一冊を読めた。

 

バイナリ畑でつかまえて

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バイナリ畑でつかまえて

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