夫の本棚に入っていたこの本。
オートマトンと言えばチューリングマシン、形式言語と言えばプログラミング言語じゃないですか(大学時代のうろ覚え知識)。なんか面白そうと思って手に取ってみたら、ガチで面白かったです。
ファンタジー世界での物語を通して、オートマトンと形式言語についての基礎理論を学ぶ本なのですが、ファンタジー小説としても面白いし、オートマトンと形式言語についての基礎理論と言うか考え方の基本といったものがパズルみたいに分かってくるのも面白い、という二重の楽しみが得られる本です。
あらすじ
魔術師アルドゥインの弟子、ガレット少年は、師に不満を抱いていた。いつまでたっても魔法を教えてくれないからだ。やっと習い始めることができたのは、魔法ではなく第一古代ルル語という不思議な言語だった。●●○、○●○○●、●○○●、○●●○、○○●●、という5つの文しか存在しないという。この古代の妖精たちが使っていた言語は、現代には意味が伝わっておらず、ガレットには学ぶ意味がないことのように思えた。
だがガレットはある日、妖精たちが残したという白と黒のとびらがある遺跡に招かれる。
それは、真の意味で言葉を知る冒険への入り口だったのだ…。
ファンタジー小説としてみると、一番感覚的に近いのはソードワールドRPGの世界だと感じました。がっちがちに設定が固まっているハイ・ファンタジーより適度にライトで、しかし軽すぎることはない、みたいなノリが、20年前のライトノベルみたいで、私のように10代でライトノベルにはまった30代とは相性が良すぎる。
一方情報科学の入門書としてみると、オートマトンを扉と部屋に例えて不思議な古代遺跡にしてしまうという切り口がとても分かりやすいです。
この物語にはたくさんの謎が登場するのですが、その謎もまた上質。なんて言ったって現実の学者さんたちが100年以上かけて研究してきた分野のエッセンスが詰まっているのですから。
ちなみに私の理解力では、偽クフ語(文脈自由語)を読解し始めるあたりからちょっと大変でした。第13章「塔」以降はあまり理解できてないかも…。でも、とても楽しかったのです。
近々続編も出るようで、そちらも楽しみにしています。