なにかのまねごと

A Journey Through Imitation and Expression

30分で書く普通の日記

 最近はあれ、自分を売るってヤツが流行ってるじゃないですか。

 別にそれは春を売るって話じゃなくて、例えばSNSだったり、動画だったりで自分をコンテンツにしてお金に変える、そういうのがすごく増えましたよね。

 ブログだってそういうののひとつですよ。まぁ、私のこのブログはただの趣味で何のお金にもなりませんけど。

 だからね、私も自分を売ってみたくなったわけです。でも私にはコンテンツになるような何かなんてありませんから、とりあえず自分の時間を30分だけ、30円で売ってみようと思ったのです。

 どう売ればいいかもよく分からなかったので、まず通販の商品が入ってた段ボールを切って看板にして、そこに「私売ります、30分30円」って書いて上野の街で立ってみたわけです。場所は上野公園入り口にある交番の裏くらいですね。そこに立てば逆に職質は受けないかなぁ、みたいな浅知恵ですけど。

 そしたらスーツを着たサラリーマン風の方に声をかけられたのです。

 で、訊かれたんですね。30分で何ができますか?って。

 私は特に特技もない普通の主婦ですから、そもそも特技がないからSNSやったりとか動画作ったりとかしないで段ボールの看板を持って上野の街で立ってるのですからね、特別なことは何もできません、って答えたんです。でも、普通のことは普通にできると思います、掃除したり料理したりとか、って言いました。

 じゃあ、日記を書けますか?ってそのサラリーマン風の人は言いました。

 私は、普通の日記なら書けると思いますって答えました。

 じゃあ、普通の日記を書いてくれ、ってそのサラリーマン風の人は言うんですよね。

 わかりました、って私は答えましたよ。なんでその人が日記を書いて欲しがったのかなんてことも聞きません。お金をいただくからにはそう言うことを聞くのは失礼な気がしまして。

 でも、その場には日記が書けるような道具はなくて、だから私言ったんですよ。

 今この場には筆記具はないから、自分のインターネットの日記に今日のことを書きます。「なにかのまねごと」で検索すれば出てきますから、今日中にはそこに今日のことを書きますから、それをご覧になっていただくことで納品ということにしていただけませんか?って。

 その人は、いいですよ、でも普通の日記にしてくださいね、って承知してくださいました。

 私は、はい、必ずそうします、って答えました。

 でも、30分で書ける内容しか書きません、とも言っておきました。私が売った私は30分だけですからね。

 それで私はその方から30円をいただいて、こうしてこの日記を書いているのです。

 何の工夫もない、ただあったことをつらつら書くだけの日記です。

 というわけで、自分を売ってみたわけですが、なんだか自分を売るって当たり前のことですね。そもそも自分と自分でできること以外にお金に変えられるものを私は持っていない。そんな当たり前のことに気がつきました。

 明日もきっと、何かの形で自分を売るのだと思います。

 そう考えると、自分を売る形が増えた今の世の中は、昔よりは少しはいいのかもしれませんね。

 30分で書く、普通の日記でした。